初老の紳士と出会った話

ふくすけ

2011年10月16日 00:18

数年前のある日、郵便局で、
初老の紳士を見かけた。

毛皮のコートを着た 白髪の、品のいい男性だった。

役場への行き方を局員に訪ねていた。

東京から来て 今ついたばかりで、このへんの地理が詳しくなく、
説明がよくわからないと困っていた。

ものすごい大荷物を持っていて、なんだか気の毒になって、
今から帰るついでに乗せて行ってあげましょうかと申し出た。

その初老の紳士は、

『ご親切にありがとう』と言ったんだ。



車を走らせ、どちらから来たのか聞いた。


東京の田園調布ってところです。


(すごいなー。だから毛皮のコート着てるのか!)


なんて思いながら、
話がはずんでいた頃、

なんだか、かすかに、懐かしい匂いがしてきたんだ。


この匂いはなんの匂いだっけ?
なんか、ちょっと香ばしいような、懐かしい匂い。。。


そんな事を頭で思いながら、おしゃべりは続いた。


役場に何の用事かしらないけど、
田園調布から来るなんて、余程の用事なんだろう。


信号で車が止まった時、ふと、

すずめが電線に一列に並んでいるのを見ていたその時、


私は思い出したのだ!!!はっ





この匂いは、、、、これは、


浅草の浅草寺の門のところにいる
鳩の大群の匂いだ!!






ん?まてよ、そうだ!
幼き頃に、家で飼っていた
鶏小屋の匂いでもある!!
コッコッコ





このおじいさん、え?、、、あ?


もしや、ホームレスさん、、、??
この大荷物は、、、、そういうことなの?!


役場に着いて、
役場の入口の真ん前で下ろしてあげたのに、


おじいさん、役場には入らず、素通りして



役場を背に、大荷物を背おって、どこかへ歩いて行ってしまった。



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